和歌山大会で準決勝に進出した智弁和歌山で、２０年前の夏の全国制覇時の捕手で、阪神などでプレーした中谷仁（じん）さん（３８）が今春からコーチを務めている。甲子園で春夏３回の優勝を誇る同校も、２０１１年夏を最後に甲子園は未勝利。恩師、高嶋仁（ひとし）監督（７１）とともに、強豪復活を目指す。

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和歌山大会の初戦となった１６日。紀三井寺球場のスタンドに中谷さんの姿があった。チームは１２得点で六回コールド勝ちしたが、代打攻勢で３連打を浴びるなどしたバッテリーが気になる様子。「選手の時より、どきどきする」と笑った。

中谷さんは１９９７年夏優勝時の主将で、ドラフト１位で阪神に入団。だが、ケガに悩まされ出場機会に恵まれなかった。移籍した楽天では監督だった野村克也氏に抜擢（ばってき）され、２００９年の球団初のクライマックスシリーズ進出に貢献。巨人に移り１２年に引退した。

その後は巨人でブルペン捕手などを務めていたが、１４年に学生野球を指導するための学生野球資格を取得。高嶋監督から声をかけられ、「もう一度全国で勝てる智弁和歌山にしたい」と、今春同校職員となり、コーチに就任した。

高嶋監督からは「バッテリーを頼む」と求められ、プロで培った考え方を選手たちに伝えていく。同じボールでも状況によって意味合いは全く異なる。「無死一塁。ここでの最高のプレーはなんや」。練習中に選手たちに問いかけ、状況に応じた心構えを説明する。

さらに、準備の大切さを訴える。例えば、一死一、三塁の場面。「０点で抑えれば最高。無理やり０点に抑えようとして連打を浴びるのは最悪」。各場面での最高と最悪のプレーを事前に考えることで、攻め方にも余裕がもてるという。

この春から正捕手に定着した蔵野真隆君（３年）は「仮に打たれても配球の根拠が間違っていなければ評価してくれる。その上で、どんな球を選択するべきかアドバイスをくれるので次につながる」と話す。捕手に専念してからわずか数カ月で守備の要として成長した。

２０年ぶりの高校野球に、「若返ったような気がする。この年でもう一度、こんなわくわく感を味わえるのは幸せ」。全国制覇したときの喜びを選手たちにも味わって欲しいと願う。（金子和史）