広陵―広島新庄 四回表広陵無死、中村は左越えに先制本塁打を放つ。投手有村。捕手沖政=マツダスタジアム、上田幸一撮影
(25日、高校野球広島大会 広陵9―5広島新庄)
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1点差に詰め寄られて迎えた九回、無死一、二塁。ここで、広陵は4番加川を打席に迎えた。ここまで3打席連続安打を放っていた主砲に、ベンチから出たサインは「バント」だった。
打席の加川は、大会直前の強化練習を思い出していた。
1番から9番まで連続で成功するまで続く犠打練習。失敗するたびに控えも含めた全員がダイヤモンドをダッシュで1周する。「あれに比べたら。冷静でいられました」。3球目、三塁線にきっちりとバントを転がした。1死二、三塁となり、後続が続いて3得点。広島新庄を突き放した。
広陵には、投打のタレントがそろっていた。平元―中村のバッテリーは高校日本代表の1次候補。評判通り、中村は四回に先制の左越えソロを放った。最速146キロを誇る左腕平元は、粘り強い投球を見せていた。そんなチームにスパイスを与えたのが、バントだった。
四回は無死一、二塁の好機で、6番大橋が犠打を試みた。きっちり当てて、走り出す。打球は三塁線のいいコースに転がり、安打になった。無死満塁。適時打に相手のミスも重なり、この回、一挙6点を奪った。
「バントは試合の流れを決めるものですから」と大橋は胸を張る。この日、チームは四つの犠打を決め、相手に一度もリードを許さなかった。
「確実に1点を取るのと、重圧をかけて嫌な思いをさせるのがセオリー」。思惑通りの展開に、中井監督は満面の笑みだ。
県内最多22回の夏の出場を誇る広島商が得意としていたのが、バント攻撃だ。広陵にとっては、切っても切れないライバルだ。
その伝統校を準決勝で破り、決勝では新興勢力の広島新庄を下した。手堅く、嫌らしく――。広島らしい野球で、たどり着いた3年ぶりの頂点。そして、全国出場回数が広島商に並んだ。「めちゃくちゃ重かったよね、プレッシャーが」。中井監督が、かみしめるように言った。(小俣勇貴)