熊本地震から1年を迎え、熊本県立劇場でのパフォーマンスで御船高校の書道部が記した書(4月15日、御船高校提供)
高校生が思いを込めた書の表現を競う「書道パフォーマンス甲子園」に、熊本地震の被災地から御船(みふね)高校(熊本県御船町)が復興支援枠で初出場する。発生から1年4カ月、復興の道のりは途についたばかり。伝えたいのは、支えてくれる人たちへの感謝と「絶対に負けない」という決意だ。
「御船高校の、パフォーマンスを始めます!」
校舎に挟まれた中庭に、書道部員の声が響き渡る。「甲子園」に向けた練習に励む部員14人はみんな女子生徒。気温30度を超える炎天下、じっと立っていられないほど熱くなった縦4メートル、横6メートルの専用紙を本番さながらに素足で踏み、音楽に合わせて墨を蓄えた筆を鋭く、打ち込んでいく。
愛媛県四国中央市などでつくる実行委が6日に同市で開く「甲子園」は、12人1組が6分間で文字や絵などで構成する1枚の書を完成させる競技。第10回の記念大会となる今年は、全国各地の予選を勝ち抜いた20校と御船高校が出場する。「筆づかいの正確さ」など書道の技術に加え「情感・詩情」や「パフォーマンス度」など7項目で審査される。
顧問の古閑(こが)雄介さん(41)は「普段の揮毫(きごう)と違い、みんなで一つのものをつくる。チームワークや体全部で表現する力が問われる難しい競技」と話す。同校の芸術コースには書道専攻があり、書道部は書の技術を競う揮毫大会でたびたび九州大会に出場する「強豪」。一方で、競技に参加したことはないが、地域のイベントなどで書道パフォーマンスも披露してきた。
昨年4月の熊本地震で、震源に近い御船町は約2800棟の住宅が全半壊するなどの被害を受けた。御船高校にも家や大切な人を失った生徒が多くいた。
書道で、みんなを元気づけられないか――。その年の6月に地元のテレビ企画でパフォーマンスを披露。
私達は一人じゃない
今美しく
咲き誇れ
共に歩んでいこう
書いたのは、地震前に考えた「若者の歩み」をテーマにしたメッセージだったが、被災地の人の心を打った。以来、県内のイベントで復興をテーマにしたパフォーマンスの依頼がたびたび届いた。地震から1年の今年4月には、県立劇場でこう書いた。