秀岳館―横浜 2番手で登板した秀岳館の田浦=林敏行撮影
(11日、高校野球 秀岳館6―4横浜)
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田浦の様子がおかしい。
七回からマウンドに上がった秀岳館のエースを、異変が襲っていた。
「投げ始めてすぐに両足がつりました」。熊本大会で自己最速を148キロに更新し、14回3分の1を投げて無失点だった左腕が、130キロ前後しか出ない。横浜の福永に131キロの直球を3ランにされ、2点差に迫られた。
だが、田浦は平然と振り返る。「焦りはなかったです」。エースには二つの大きな支えがあった。選抜まで3季連続で甲子園4強の経験。そして、もう一つ。
「自分には、チェンジアップがあるんで」
球速は105キロほど。リリース後に一瞬浮き上がり、そこから急激なブレーキがかかり右打者の外角へ沈む。今春の選抜で対戦した大阪桐蔭のコーチを「あれはプロ並み」と恐れさせ、捕手の幸地が「まともに打たれた記憶がない」と絶大な信頼を置く変化球だ。
これが威力を発揮した。直球はほとんど投げない。スライダーでカウントを取り、チェンジアップで決める。九回は先頭からこの球で連続三振。2打席続けて三振した横浜の3番斉藤を「待っていてもボールが来なくて振らされる。あんな球初めて」と嘆かせた。
一回の先制攻撃、継投での逃げ切り。すべてが思惑通りに進む中、「足がつったことだけが誤算でした」と、この夏で退任を表明している鍛治舎監督。横浜という難敵との一戦で襲ったアクシデントすら、エースが巧みに乗り切る強さ。主将の広部は言う。「まだ1勝しただけ。これからです」。悲願の日本一へ、集大成の大会が始まった。(山口史朗)
◇
○鍛治舎監督(秀) 今大会限りでの監督退任を決めている。「また一つ良い思い出ができました。先は見ません。このチームの持ち味を出していく」
○川端(秀) 先発で6回を被安打2、1失点。右打者の内角を突く投球が光った。「どんどん振ってくるんで、まっすぐで詰まらせようと思いました」
○広部(秀) 長打2本と活躍。「力が入りすぎないように、楽に構えてコンパクトな振りを意識した。序盤に点を取って川端を楽にできた」