男子100メートル決勝で9秒98を記録した桐生祥秀(左端)。右から2人目は多田修平=上田潤撮影
桐生選手が日本人初の9秒台を出した福井運動公園陸上競技場(福井市)では、8千人の観客が目の前で起きた快挙に大きな歓声をあげ、興奮さめやらぬ様子だった。
特集:桐生祥秀
観戦した駿河台大(埼玉県)陸上部1年、半田健太さん(18)は「数字を見た瞬間鳥肌が立ちました」。同じく1年の松尾優大さん(18)は自身も100メートルの選手。「9秒台なんてもうすごいとしか言えません」
「こんな歴史的瞬間を生で見られて感動しました」。会社員川畑武志さん(44)は三重県名張市から来た。10種競技に出場する息子をビデオに撮ろうとしたが、男子100メートルと時間が重なった。「思わず桐生選手を追ってしまった。息子が全然映っていません」と笑った。
JR福井駅前の広場ではトップアスリートのトークショーの後、「出るか日本人初の9秒台、みんなで応援イベント」と題し、競技場の様子を大型スクリーンに映し出す観戦の催しがあった。200席の椅子は満席。数百人が中継映像を見つめた。「9・98」の記録が出ると、会場は大きなどよめきに包まれた。
「まさかこのタイミングで9秒台が出るなんて。驚きしかない」。短距離走の経験者という福井市の会社員橋本正さん(37)は「昔から注目していたけど、抜け出す能力が半端じゃなかった。福井に住んでいて、珍しく良かったと思った。これからはさらに速いタイムを出してもらって、世界の強豪と渡り合ってほしい」と話した。
金沢市からこのイベントのために駆けつけた公務員伊藤俊輔さん(53)は「信じられない。調子が良さそうだったので万が一を考えて。見に来てよかった」。
今大会は来年の福井国体のプレ大会として開かれた。選手ら約2千人が全国から福井入りし、9日は大会2日目だった。
福井陸上競技協会の梅田憲一理事は「桐生君のおかげで福井国体への関心もぐっと上がったはず。これで来年の国体も盛り上がってほしい」とあやかりたい様子だった。(南有紀、影山遼)