阿武咲(右)は照ノ富士を引き落としで破る=林敏行撮影
(13日、大相撲大相撲秋場所4日目)
最後の仕切り。間を嫌った大関が「待った」をかけた。阿武咲(おうのしょう)は動じない。「変化が来るのか、本当に嫌なのか、見てました」
その分、立ち合いにいつもほど威力がない。それでももろ手で照ノ富士の巨体を受け止めた。「左(腕)が伸びたのがよかった」。力が伝わっているから、引き技が決まる。バタリとはいつくばった大関に目もくれず、涼しい顔で勝ち名乗りを受けた。貴景勝とともに幕内最年少の21歳。両関脇と小結を倒し、初の大関戦も制して4連勝だ。
津軽半島の中央部に位置する青森県中泊町で育った。本名は打越奎也(うてつふみや)。小学生のころから強く、その名は全国にとどろいていた。三本木農高1年で国体制覇。その年に中退し、阿武松部屋に入門した。常ににらみつけているような鋭い目。「勝ったもんが強い」と言い放つ強気。押し相撲に磨きをかけ、新入幕だった今年夏場所から10勝、10勝ときた。
場所前、白鵬が「気になる若手」として挙げたのが阿武咲だ。少年相撲の国際大会「白鵬杯」を始めた2010年、団体戦の優勝チームに彼がいた。それから約7年。阿武咲が自分と対戦する位置まで来たことに、白鵬は「夢でもあった」とかみしめていた。
そして阿武咲は白鵬を含む3横綱不在の場所を盛り上げている。5日目は日馬富士に挑む。「楽しみですね」。初の結びにも、臆することはなさそうだ。(鈴木健輔)
■「意識が飛んじゃった」
先場所に続く自身2個目の金星にも、北勝富士は不思議そうな表情で言った。「立ち合いで当たった瞬間に意識が飛んじゃった。気づいたら横綱が土俵際にいて」。日馬富士の低い当たりに後退させられたが、体を入れ替え、右上手をとって寄り切った。「先場所は圧倒された横綱に勝てたのがうれしい」。記憶のない一番を笑顔で総括した。
●日馬富士 出場する唯一の横綱、はや2敗目。「気持ちを切り替えてまた明日に備えます。まだ始まったばかり」
○豪栄道 2日続けての注文相撲で3勝目。「横から攻めようとした。左上手を取られるとね。やることをしっかりやる」
○玉鷲 過去8戦全敗の御嶽海に初勝利。「コツがわかったような気がするな。(対戦成績で)逆転します」
●照ノ富士 カド番大関が3敗目。「相手どうこうじゃない。自分の相撲がとれない」
●御嶽海 過去8戦全勝の玉鷲に屈す。「自分のミスです」
○琴奨菊 4連勝に笑顔。「やってる方向性はいいと思う」。方向性は今場所の頻出ワード。