無罪となった男性が、万引きをした商店。店番がいる目の前で、店先の陳列台から大根の漬物を手にとって走り去った、という=大阪市
漬物を盗んで逮捕、起訴された大阪市の男性(72)が今春、裁判で無罪判決を受けた。認知症の一種によるもので、本人の責任は問えないと判断されたからだ。男性はそれまでも3回、万引きで有罪判決を受けていた。これらの事件も認知症が影響した可能性があると判決は指摘したが、捜査や過去の裁判では考慮されておらず、家族も気づいていなかった。
男性は2年前の12月、大阪市内の商店で大根の漬物2袋、500円相当を万引きしたとして起訴された。店先で商品を手にとって自転車で走り去ったが、追いかけてきた店員に現行犯逮捕されたという。
昨年2月、大阪地裁で始まった裁判で、長女の年齢を大きく間違えるなど、男性の不自然な言動が目立った。裁判官が精神鑑定を促し、弁護側が依頼した。「前頭側頭型認知症が犯行を引き起こした」との結果が出た。
前頭側頭型認知症は、アルツハイマー型認知症と違って妄想が少なく、普段は問題なく生活を送れているように見えるが、興味を引くものが目に入ると自分を制御できなくなることがある。鑑定書は「漬物を目にした男性は、認知症の影響で自分の置かれた状況や支払いのことが意識から消えた」と指摘した。
検察官は懲役10カ月を求刑。…