横浜U15の練習で、シュートを放つ田中
史上最年少でバスケットボール男子の日本代表候補に招集された神奈川県横須賀市の中学3年生、田中力(15)。バスケット界の「期待の星」にとって、10月31~11月2日に参加した初めての強化合宿は、Bリーグ選手らとの力の差を見せつけられながらも、収穫の多い3日間になった。
バスケ代表候補に史上最年少の中3 東京五輪へ注目株
「プロの人たちはフィジカルが本当にすごくて、全然通用しなかった。セットプレーも全然覚えられなくて、申し訳ない気分だった」。3日間の合宿を振り返る言葉は反省ばかりだったが、半面、表情は充実していた。「めっちゃやられて悔しいけど、それが楽しかった。そういう環境でもっとやりたいと思った」
今年3月、神奈川県選抜メンバーとして出場した都道府県対抗ジュニア大会(ジュニアオールスター)の長崎県との決勝で59点中34得点を挙げるなど、3点シュートも含めてどこからでもゴールを奪える抜群の得点力を誇る。だが、今回の合宿では、Bリーグで活躍するプロ相手にことごとく阻まれたという。
1日目の夜、どうすればいいか考えた。翌日は自分のドライブからパスをさばくなど周りを生かすプレーを心がけたところ、フリオ・ラマス監督らから「今日はとてもよかった」と褒められた。合宿終了後、かねてから親交があった千葉の富樫勇樹に感想を求めに行くと、「中学生は使わないようなスクリーンプレーも多くて難しかっただろうけど、よくできていたと思うよ」と声をかけられたという。
■小4から始めた
田中は米国人の父と日本人の母の間に日本で生まれ、2歳で渡米。小学3年生で日本に戻り、小4の時にバスケットを始めた。すぐに夢中になり、米軍の敷地内のバスケットゴールで毎晩午後10時まで練習に明け暮れた。最大の持ち味、ボールハンドリングの良さはこうして身につけた。
横須賀市立坂本中でバスケット部に所属しながら、今春からはB1横浜の15歳以下のチーム(U15)にも所属。将来を見据え、ポイントガードとしての基本をたたき込んでもらっている。横浜U15の白沢卓ヘッドコーチは「得点力に加えて、状況判断や他の選手を生かした攻撃の組み立て方、リーダーとしてチームメートを引っ張ることを伸ばしたい。理解力はとても高い」と話す。
■プレー動画、ネットで話題に
今夏ごろから、田中のプレーをまとめた動画がインターネットでシェアされ、バスケットファンの間で話題を呼んだ。「最初は恥ずかしかった」というが、動画を見た同世代の中高生らから、ツイッターやインスタグラムを通じて「バスケやめようと悩んでいたけど、力君のプレーをもう一度がんばろうと思った」などとメッセージが寄せられるようになった。「うれしいとか感謝とかを超えた気持ち」だったといい、「それから本当に変わった。さらにバスケを頑張ろうと思った」と話す。
米国の高校進学も含め、進路はまだ模索中。「できるだけ早く世界のバスケを味わいたい」と夢みる。2019年ワールドカップ(W杯)、20年東京五輪での活躍が期待される。「もし代表に選ばれたら、チームを勝たせたい。東京五輪はホーム。いい結果を残したい」と意気込む。
男子日本代表はW杯予選1次リーグの初戦となる24日のフィリピン戦(東京・駒沢体育館)に向け、最終的に12人が選ばれる。(伊木緑)