パラダイス文書に載っていた16年米大統領選の年の主な個人献金者
昨年の米大統領選時に巨額の献金をしたカジノ王や投資家らが、タックスヘイブン(租税回避地)を利用していたことが、「パラダイス文書」を元にした国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の取材でわかった。主な献金者のうち、文書に名前が載っていた計5人だけで、計1・8億ドル(205億円)に上る。ヒラリー・クリントン元国務長官だけでなく、選挙戦で既得権層を激しく批判したドナルド・トランプ氏もこうした献金に支えられていた。
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米ラスベガスのカジノリゾート「サンズ」のシェルドン・アデルソン会長は共和党候補だったトランプ氏を支持。選挙を監視する米「レスポンシブ政治センター」によると、共和陣営に個人で最高の8250万ドル(94億円)を献金した。
パラダイス文書によると、英領バミューダ諸島のプライベートジェット機運用会社の社長として、アデルソン氏の名があった。この会社にサンズから2010~16年、数千万ドルが支払われていた。同氏の個人資金を米国からタックスヘイブンに移した可能性がある。
トランプ支持者でバノン元首席戦略官の登用にも影響を及ぼしたロバート・マーサー氏は、2464万ドル(28億円)を献金した。同氏の経営する投資ファンドの八つの子会社が、バミューダに登記されていた。
民主党の献金者として文書に名前があったのは、億万長者のジェームズ・シモンズ氏。バミューダに信託財産を持ち、個人の信託財産として世界最大規模である70億ドル(8千億円)以上を保有していた事実が明らかになった。同氏は民主陣営に2674万ドル(30億円)を献金。約半分は、クリントン氏を支持する団体向けだった。
クリントン氏の有力支援者で、2112万ドル(24億円)の献金をした投資家のジョージ・ソロス氏も、バミューダ諸島やバージン諸島に企業ネットワークを持つことが文書から発覚した。
ICIJの取材に対し、アデルソン氏とマーサー氏、ソロス氏は回答しなかった。シモンズ氏は「税逃れのために信託財産を使ってはいない」とした。(野上英文、高野遼、スペンサー・ウッドマン(ICIJ))