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(中西哲生コラム)ブラジル戦、臆せず勇敢に戦え

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スポーツジャーナリストの中西哲生さん


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まもなくサッカー日本代表がブラジル代表と戦います。14日のベルギー戦を含め、今回の欧州遠征のマッチメイクは申し分ないといえます。


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近年はただでさえ代表の国際試合ができる日程が限られ、各大陸のW杯予選もあって、大陸をまたいだ強化試合は簡単ではありません。そんな中、南米とヨーロッパの強豪国との対戦。しかも各代表の試合が少なくなったことで、ブラジルも決して手を抜かない可能性が高いでしょう。ブラジルのチチ監督も「日本と(次に戦う)イングランドを事前に丸裸にして戦う」と話していて、W杯本番に近い想定の試合ができそうです。


ブラジル、ネイマールら先発 ハリル監督は先発明かさず


日本のハリルホジッチ監督は欧州遠征のメンバーから本田、香川、岡崎を外しました。これは、メンバーが横一線だというメッセージであるとともに、日本代表の中にあった一つのパターンを崩したものでもあります。そのパターンというのはファンタジスタ系、つまり従来の10番タイプの選手が、トップ下のポジションでチームの中心を担うというものです。今、それは世界のトレンドから外れてきています。


ブラジル戦、「圧倒的な差」崩すスキは? サッカー代表


世界の潮流からいうと、創造力のある選手のポジションはトップ下ではありません。4―3―3なら、中盤の3人は守備がしっかりとできて、長い距離を何度も走れることがベース。創造力が持ち味の選手は、3トップの外側に位置する方向に変わってきていて、ブラジルならネイマール、ベルギーならアザールがそれに該当します。当然ハリルホジッチ監督にも、そのトレンドが頭の中にあるのでしょう。


また以前なら、創造力のある選手には時間とスペースが少しは与えられましたが、今はそれがありません。ヨーロッパのクラブで戦っているブラジル人選手も、時間とスペースがある中での自由より、それぞれのポジションで監督に求められる最低限の攻守のプレーを果たした中で、自分を表現しています。


それがそのまま今回のブラジル代表に反映されていて、おのおのがそのポジションで何をしなければいけないか、というベースが非常に高く、明らかに従来のブラジル代表から進化した点です。


過去、日本はブラジルに2分け9敗。3点以上とられた試合が7試合もあります。今回も0―4、0―5という試合になってしまう可能性があるでしょう。そんな中、日本が目指すべきは90分間を少ない失点でおさめることよりも、相手が攻撃の手を緩めないトップギア、つまり0―0で長く戦わせることです。それも、相手の良さを消すプレーだけで長く戦うのではなく、自分たちの良さを出しながらも相手の良さを消して、その状態で相手にトップギアで戦わせることが理想です。それが長い時間できればできるほど、得がたい経験が増えるでしょう。


今回のブラジルと日本は、はっきりと力の差があります。日本は、より多く、賢く走らなければいけないし、1対1で抑えきれない局面を2対1にしたり、カバーリングの位置を的確にしたりしなければなりません。ボールから一番遠くにいる相手選手は余らせて、いかにボールに近いところに自分たちの人数をかけられるかという、オートマチックさも求められます。


ただ今の日本の守備をみていると、ボールの位置を意識するより、「デュエル(決闘)」ということを意識して、人をつかみにいくプレーが多いので、それによって生じる守備のバランスの悪さが解消されないと、前半に守備が崩壊する可能性も十分あるでしょう。


最後に当たり前のことですが、選手たち個人個人は臆せず勇敢に戦って欲しい。臆病に戦っても何も得られないし、今あるものを百%出し切るためには、それが一番必要な精神状態だからです。個々がそういったプレーができれば、ロシアW杯に向けてのチームとしての課題も浮き彫りにできるはずです。



なかにし・てつお 1969年生まれ、名古屋市出身。同志社大から92年、Jリーグ名古屋に入団。97年に当時JFLの川崎へ移籍、主将として99年のJ1昇格の原動力に。2000年に引退後、スポーツジャーナリストとして活躍。07年から15年まで日本サッカー協会特任理事を務め、現在は日本サッカー協会参与。このコラムでは、サッカーを中心とする様々なスポーツを取り上げ、「日本の力」を探っていきます。



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