レース後の中村
お茶の水女子大出で初めてのボートレーサー、中村かなえ(24)が9日、東京・平和島ボートレース場でデビューした。6艇中の5着同着。「すべてのレースを無駄にしないよう勉強していきたい」。理学部専攻という異色選手のレーサー人生が滑り出した。
晴れてはいたが、9日の平和島は強風が吹いた。水面は荒れ、新人選手には、難しい条件となった。「(ボートが)めくられないよう気をつけました」。先輩たちに食らいつき、5着同着でゴールした。
「うまくターンできないところもありましたが、あきらめないでやれました」
東京都出身。小学校までは水泳を習い、中学から大学まではソフトテニスに親しんだ。ただ大きな大会で好成績を挙げたことはない。お茶の水女子大では理学部で化学を専攻。現在は同大大学院に在学する。
大学4年の時、就職雑誌でボートレーサーの記事に触れた。初心者でも1年間の訓練でプロになれることなどに魅力を感じ、チャレンジを決めた。両親と姉は驚いたというが、今は応援してくれる。
中村が志願した第121期は1220人が応募。34人が合格し、1年間の養成所生活で25人に絞られた。25人のうち、5人が大学出か在学中という。
全国で約1600人が活躍するボートレーサーのうち女子は214人(9日現在)。女子に与えられている特典は最低体重が47キロで男子より4キロ軽いことぐらい。同じ性能のモーターとボートで互角に戦う。
昨年、女子でもっとも稼いだのは松本晶恵(30)で獲得賞金は4493万6千円だった。これは全体でも38位にランクし、トップの瓜生正義(41)は2億1千万円以上を獲得した。
「ボートはめちゃめちゃむずかしい。でも、むずかしいからこそ楽しい」と中村は話す。専門知識をいったんは手放すことになるが、「未練はない」。挑戦は始まったばかりだ。(有吉正徳)