兵庫・三田松聖高の主将としてチームを引っ張った稲富宏樹
「紫外線アレルギー」を乗り越えた高校球児が、プロ野球オリックスに育成枠で入団する。兵庫・三田松聖(しょうせい)高の捕手、稲富宏樹(18)が球団と仮契約を結んだ。「病気と闘う人や野球をしていない人にも元気を与えられる存在になりたい」と話した。
紫外線アレルギーの球児 「ボール見えない」泣いた日も
紫外線アレルギーの球児、8強ならず 将来はプロ目指す
20日、大阪市内で仮契約を終えた稲富は「ハンコを押す時には手の汗がすごかった。実感がわいてきました。これからオリックスの一員としてやっていこうという気持ちでいっぱいです」とあどけなく笑った。支度金300万円、年俸250万円(金額は推定)。
大阪出身の稲富は強肩強打を買われ、高1の春からレギュラーとして起用された。ただ、重圧などからくるストレスからか、その年の5月ごろ、体に赤い湿疹が出来た。かゆみや痛みが治まらず、病院で血液検査した結果、「紫外線アレルギー」と診断された。医師からは屋外での活動を控えるよう言われた。
昼間に強い光を浴びてしまい、意識が遠のいて、練習できないこともあった。それでも出来る範囲で練習を重ね、投薬や塗り薬などで治療して、3年時には主将として夏の兵庫大会でチームをベスト16に導いた。「病気に立ち向かえたところは一番自信を持つところ。精神的にも成長できた」と胸を張る。現在は症状が落ち着き「もし再発しても、一度乗り越えたので怖くない」という。
谷口悦司スカウトは「初めて見た時の肩の強さが忘れられない。試合でも何度も(盗塁を)二塁で刺していた。育成だが、すぐに支配下(登録選手)になれる力がある。楽しみな戦力」と評価する。
背番号は123。「だんだんあがっていくいい番号。僕もしっかりステップアップしていこうと思います」。座右の銘は「奮励努力」。その言葉のように、プロの世界でも目標に向かって自らを奮いおこし、ひたすら努力していく。(藤田絢子)