八回表ソフトバンク1死一塁、内川は通算2千安打となる中前安打を放つ=日吉健吾撮影
(9日・プロ野球 ソフトバンク3-0西武)
ソフトバンク・内川聖一、2千安打達成 史上51人目
こわばっていた表情が、ようやく崩れた。この試合の第4打席だった、八回1死一塁。ソフトバンクの内川が、127キロを捉える。ライナーが中前へ飛んだ。偉業に王手をかけてから、15打席ぶりの安打。一塁ベース上から味方ベンチに向かって、拳を突き上げた。
セ・パ両リーグで首位打者を獲得。それでも、大台を前に心は揺れた。「周囲の盛り上がりを見るにつれ意識した。打席の中で、ふわふわしていた」。焦りから打撃フォームやタイミングが狂った。重圧の中で決めたのは、球を十分に引きつけ、右方向へ打ち返す打撃だった。
メモリアルヒットを祝福するため、試合が止められた。グラウンドでは2千安打が入会条件の名球会の先輩、王球団会長らから花束を手渡された。ソフトバンクに導いてくれた恩師の「打撃練習は今日のためじゃなく、1、2カ月先のトレーニングと思ってやらなきゃだめだ」の言葉を胸に、並みいる歴代強打者たちの仲間入りを果たした。
横浜時代、守備面で送球難に陥る時期もあり、定位置が固定されなかった。それでも、内、外野問わず複数の守備位置を守ったことで出場数は大きく落ちず、打席数が確保できた。
工藤監督が就任した2015年以来、主将と4番を任される。「自分が活躍してもチームが勝たないとつまらない」と、安打への価値観が変わった。自分だけの記録ではない。数字の中には、チームの勝利に貢献してきた積み重ねがある。(甲斐弘史)