動物園で命を救われたモシェ・ティロシュさん=イスラエル北部カルミエル、渡辺丘撮影
ナチスドイツ占領下のポーランド・ワルシャワでユダヤ人を動物園の地下にかくまい、300人の命を救った夫婦の実話を映画化した「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」が15日から日本国内で公開された。夫婦に命を救われた男性が朝日新聞に恩人への感謝の思いを語った。
男性はイスラエル北部カルミエル在住のモシェ・ティロシュさん(80)。1942年秋、5歳の時に一家でワルシャワのゲットー(ユダヤ人強制居住区)を逃れ、夫ヤンと妻アントニーナの夫婦が営んでいたワルシャワ動物園の地下に2歳下の妹と、両親は動物のオリの中に隠れた。
窓もなく薄暗い地下の一室で、昼も夜も一言も発さずに座り込み、妹が泣きそうになると口を手でおさえた。食事は夫婦の息子が運んできてくれた。摘発を恐れて、4週間の滞在中、アントニーナが両親の姿を見せてくれたのは一度だけだった。
ティロシュさんは振り返る。「ドイツ兵は爆撃でオリから逃げた動物を捕まえるために来ていたが、多くのユダヤ人が隠れていたとは想像できなかった。彼らは殺すことをためらわず、私が見つかれば、他の人も見つかる。起きてから寝るまで恐怖にさいなまれた」
生と死が隣り合わせの毎日で、…