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宮本亜門さんと保護犬の絆 「精いっぱいの愛情くれる」

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宮本亜門さんとビート(宮本さん提供)


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演出家として国内外で活躍する宮本亜門さん。愛犬家としても知られる宮本さんが、いま共に暮らしているのは保護犬です。犬と過ごす日々や日本のペットが置かれている現状について聞きました。


――一緒に暮らしているビート君とは、どのように出会いましたか。


ビートは、沖縄県動物愛護管理センターから引き取った保護犬です。実は2代目なんです。先代のビートは映画撮影中に、茂みの中に捨てられているところを拾いました。


僕はもともと犬が好きだったのですが、仕事が忙しいこともあって、飼うことをあきらめていた。でも、ビートとの出会いは運命だと思って、飼うことにしたんです。その後、先代ビートが亡くなって失意のどん底に。


「生まれ変わりを探そう」と沖縄のセンターに通うようになり、2代目となるいまのビートと巡り合いました。


――2匹は似ていますか?


人なつっこいところとか、僕に精いっぱいの愛情をくれるところとか、そっくりだと思います。


すごいなぁと感じたのは、僕が海で浮かんでリラックスしていると、おぼれたのではないかと不安になったのか、「大丈夫?」と水をかき分けて寄ってきてくれたときです。2匹とも泳ぐのは苦手なのに、同じ反応をした。「輪廻(りんね)転生」ってあるのかなと思います。


――犬と暮らすようになって、生活は変わりましたか?


日々が豊かになった実感があります。犬の「ものの見方」はすごく新鮮なんです。食事や遊びなど、僕たちは「習慣」として受け流してしまう何げないことでも、犬は毎回すごく喜んだり楽しんだりして感情を表現してくれます。


また毎日朝晩、ビートと散歩に出かけることで、四季の移ろいを肌身で感じることができるのも心地いいです。


――保護犬を飼うだけでなく、犬猫の殺処分を減らしたり、ペットショップのあり方に問題提起をしたりするキャンペーン活動にも参加していますね。


沖縄で暮らしていたころ、多くの捨て犬が自治体によって捕獲され、連れて行かれる光景を目にしていました。気候もよく自然が豊かないい場所に自宅があったのですが、そういう場所だと余計に「ここなら大丈夫」と思って、飼い主が捨ててしまうのでしょう。


でもいったん野良犬になってしまえば、狂犬病予防法によって捕獲され、多くの場合は殺処分されてしまうのです。そんな事情を犬たちは知りません。


多くの犬たちが幸せに暮らせる環境を作るにはどうしたらいいのかと考えたとき、「自分で保護犬を飼っているだけでは足りない」と思ったのです。


――自治体が運営する犬猫の収容施設について、暗いイメージを抱く人も多いと思います。


一般には、実態があまり知られていませんね。殺処分する施設というイメージが先行していると思いますが、同時に、保護犬や保護猫との出会いの場所であるということも、もっと多くの人に知ってもらいたいです。


「いま、こんな犬や猫が収容されています」「こうすれば、新たな飼い主になれます」などといった情報を、各自治体のほうからもっと積極的に出すといいかもしれません。


――日本のペットたちを巡る課題についてはどう考えますか?


動物福祉の面で、日本はたいへん遅れていると思います。仕事などを通じて海外に知人が多いのですが、日本の現状を話すと皆さんびっくりします。


たとえば、日本中どこにでもペットショップがあり、その店頭でたくさんの子犬や子猫が販売されているという実態には本当に驚かれます。


ペットショップで、ビートのことを考えながらおもちゃやフードを選ぶ時間は好きなんですが、同じ場所で生きている動物を狭いケースで販売しているのには大きな違和感があります。見ていてとてもつらいですし、店頭に子犬や子猫を置かなくても、犬猫を販売する手段はほかにもいろいろあると思うのです。


想像してみてください。命を「モノ」として狭いケースに展示し、販売している光景を人に置き換えてみたら、どうでしょうか。


それと飼い主の側の問題も気になっています。犬や猫などのペットと暮らす前には、手間をかけて準備をしなければならないはずです。本当に飼えるのか、最後まで飼う覚悟はあるのか……よく自問自答する必要がありますよね。


ペットには命があります。想像と違ったからといって、安易に「いらない」と手放してしまうようなことはあってはいけません。


いまはネットでなんでもスピーディーに入手できてしまう時代。その感覚の延長線上でペットと暮らし始めたら、不幸な結末を迎える可能性が高い。いまの自分に本当に飼いきれるのか、幸せにできるのか、じっくり考え、準備してからペットを迎えてほしいと思います。


――いま、力を入れている活動について、教えてください。


呼びかけ人として関わっている、「TOKYO ZERO」というキャンペーンです。殺処分されているペットをゼロにしようという目的でスタートしました。ペット産業の適正化や、保護犬・保護猫との出合いを広める活動をしています。


たとえば、生まれたばかりの子犬や子猫の販売を禁止するための「8週齢(生後56~62日)規制」の実現も、そのひとつです。


幼い子犬・子猫があまりに早く生まれた環境から引き離され、ペットショップで販売されると、無駄吠(ぼ)えや無駄がみなどの問題行動が多くなり、飼い主の飼育放棄のきっかけにもなりかねないと聞いています。欧米先進国の多くでは生後8週間を過ぎるまで、販売目的で子犬や子猫を生まれた環境から引き離すことを禁じているそうなので、日本でも同様の規制ができればいいと思っています。


不幸な目に遭う犬や猫をなるべく減らしたい。日本を「動物福祉先進国」にして、すべての動物たちが幸せな生を送れる環境が整備されればいいなと思っています。つまり、動物愛護団体が不要になる世界が実現できたらいいですね。(中井なつみ)



みやもと・あもん 1958年東京生まれ。演出家。「不幸な犬猫ゼロ」を目指す「TOKYO ZEROキャンペーン」の呼びかけ人としても活動を続けている。



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