厚生労働省東京労働局は26日、裁量労働制を社員に不当に適用して残業代を支払っていなかったとして、不動産大手の野村不動産の本社(東京)と、関西、名古屋、仙台、福岡の4支社に対し、同日までに是正勧告を出したことを明らかにした。宮嶋誠一社長に対し、是正を図るよう25日付で同労働局長から特別指導もした。
同労働局によると、野村不動産は本来、裁量労働制の適用が認められない社員に対し、全社的に不当に裁量労働制を適用し、営業などの業務をさせていた。このため、違法な時間外労働が発生していたにもかかわらず、残業代を支払っていなかった社員が一部にいるとして、未払い残業代の存在を認めた。
裁量労働制は、仕事の進め方や時間配分をある程度自分で決められる働き手に、あらかじめ決められた「みなし労働時間」に基づいて残業代込みの賃金を支払う制度。それ以上働いても追加の残業代は出ない。
野村不動産は「対象者の労務時間について精査のうえ適切に対応する。当社では既に裁量労働制の廃止を決定しており、速やかに実施する。今回の是正勧告・指導を厳粛に受け止め、適切な労務管理に努めるとともに労務時間の短縮を目指す」とするコメントを出した。