16日午前11時半ごろ、博多発東京行き新幹線「のぞみ20号」(N700系、16両編成)が東広島―三原駅間を走行中、車掌が異音に気づき、姫路駅で緊急点検した。台車などに異常は見つからなかったが、乗客を新大阪駅で別の車両に乗り換えさせ、東京駅まで運行した。JR西日本は「(台車に亀裂があったのぞみ34号の)重大インシデントのことも踏まえ、念のため車両を交換した」としている。
JR西によると、最後部の1号車の運転台付近にいた車掌が「トンネル内を走行中、ドンドンと音がする」と指令に報告。岡山駅から乗り込んだ保守担当2人が再び異音を確認したため、午後0時20分ごろ、停車予定のなかった姫路駅で床下を点検した。車両に異常は見つからず、運行を再開して新大阪駅に約20分遅れで到着した。
JR東海に新大阪駅で運行を引き継ぐため、東京にいるJR西とJR東海の指令間で協議し、「念のため、異音の詳しい原因を調べる」と判断。車両交換を行ったという。
仕事で茨城県に向かうためこの新幹線に乗っていた山口県の男性会社員(31)は、音楽を聴きながら寝ていたため、異常に気づかなかったという。新大阪駅で周囲の乗客が降車したため、「焦った」とツイッターでつぶやいた。
男性は車両を乗り換えた後、隣の席の男性と「この前もあったよね」と言葉を交わしたといい、「万が一(事故が)起きていたら……」と振り返った。乗客の中にはJR社員に不満をぶつける人もおり、社員は対応に追われ焦っている印象だったという。
また、16日午後0時45分ごろ、新大阪発博多行きの「こだま741号」(500系、8両編成)が新倉敷駅を出発直後、駅員が「出発時に油のようなにおいがした」と指令に報告。次に停車した福山駅で駅員が「1、2号車間で油の臭い」を確認。車掌が台車など床下を点検したが、異臭や異常はなく、約30分遅れで出発した。広島駅から保守担当3人が乗り込み、2号車デッキで塗料のような臭いをわずかに確認したが、他に異臭はなく、終点まで運行を続けたという。JR西は詳しい原因を調べている。
JR西は昨年12月、のぞみ34号が車内で音や臭いなどの異常が生じながらも約3時間運行を続け、名古屋駅で台車に破断寸前の亀裂が見つかる重大インシデントを起こしている。来島達夫社長は「異常がないことを確認できない場合、ちゅうちょなく列車を止めることを徹底する」と明言している。(波多野大介、寺尾佳恵)