ショートトラック男子1500メートルに出場した渡辺啓太に声援を送る米田美夏さん(手前右)や阪南大の学生ら=10日夜、大阪府松原市、高岡佐也子撮影
平昌(ピョンチャン)冬季五輪は10日、ショートトラック男子1500メートルがあり、吉永一貴(名古屋経大市邨高)、横山大希(トヨタ自動車)、渡辺啓太(阪南大職員)が出場したが、いずれも予選で敗退した。
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阪南大(大阪府松原市)では同日夜、五輪初出場の渡辺を応援しようと、同市主催のパブリックビューイング(PV)があり、学生や地元の人ら約270人が応援した。
渡辺は阪南大の学生時代に前回ソチ大会出場を逃し、この4年、「何が足りないのか」と答えを探し続けてきた。
「五輪に出たいと言うが、実力が伴わない。本気になるきっかけが必要だな、という印象でした」。阪南大OBで長野五輪のショートトラック金メダリスト、西谷岳文(たかふみ)さん(39)は振り返る。
抜きつ抜かれつの駆け引きをする競技だが、成長を見守ってきた西谷さんは「本気になれば、格上の選手など気にならなくなる」と、渡辺に「五輪へ行く境地」を説いてきた。
幼稚園時代からスケート靴を履いてきた渡辺は「何のために競技をしているのか」と原点を見つめた。頭に浮かぶのは西谷さんに幾度も見せてもらった金メダル。「それを取るためにやってきた」
「見る度に前向きになれる」。メダルをまた見ようと、昨春も京都の西谷さん宅を訪ねた。代表チームのジャージーも持参し、メダリストになった気分で撮影。画像を待ち受け画面にし、スマホを取り出すたびに自分がメダルをとる姿を想像した。モチベーションが高く保てる感じがした。
昨年1月の全日本選手権で初の総合優勝をし、調子を上げていた。その後も世界大会などで実績を積みあげ、大舞台にたどり着いた。渡辺は「メダルを自分の力で持って帰る」と誓っていた。
この日、予選の第5組に出場した渡辺。序盤から前へ出る積極的なレース展開に、PV会場は沸いた。ゴール間際にアメリカの選手に抜かれて4着。「あー」と残念がる声が漏れたが、すぐに「渡辺、渡辺」とエールを送る声が上がった。
阪南大OGでソルトレイク以後3度の冬季五輪にショートトラック女子の代表として出場した米田美夏(旧姓小沢)さん(32)も会場でレースを見守った。「結果は残念だったが、力強いレースだった。悔しさを次に生かして欲しい」と話した。(高岡佐也子)