卸売市場で働くパート社員4人が、正社員と同じ作業をしているのに通勤手当と皆勤手当に格差があるのは労働契約法に違反するなどとして、未払い分など計120万円の支払いを求めた訴訟の判決が福岡地裁小倉支部であった。鈴木博裁判長は「相違は不合理」として請求をほぼ認め、会社側に計112万円の支払いを命じた。
判決は2月1日付。原告代理人の安元隆治弁護士によると、正社員と非正規社員の不合理な待遇格差を禁じた改正労働契約法20条の違反を認めた判決は数例しかないという。
原告は九水運輸商事(北九州市)のパート社員で、せり前に魚の下処理などに従事。判決によると、同社は2014年10月に就業規則を改定するまで、パート社員の通勤手当を正社員の半額の一律月額5千円にとどめていた。
判決は、原告が自家用車で25~40分かけて通勤するのは正社員と変わらず、通勤の実費は月額1万円を超えていたと認定。「実際の通勤費用を考慮せず、一律に半額を支給する差異は不合理」と指摘した。
そのうえで、同法20条の規定が施行された13年4月から就業規則改定までの19カ月分、1人あたり9万5千円を不法行為による損害と認定した。同社側は、一律支給の通勤手当は皆勤手当のような性質で、業務内容の異なる正社員との相違は不合理とは言えないと主張したが、判決は退けた。
また、同社は14年の就業規則改定で月額5千円だった皆勤手当をパート社員のみ廃止した。判決は、労働条件の不利益変更についての要件を定めた同法10条を満たさないと認定。改定後の37カ月分、1人あたり18万5千円の支払いを命じた。
同社は正社員とパート社員を合わせて約50人。安元弁護士は「全国の会社の大半は中小零細企業。組合加入率が低く、格差を訴えにくい非正規社員を勇気づけ、会社に格差是正を促す機運になる判決で、影響は大きい」と話す。(村上英樹)