新しい弁当袋を作るために、ミシンをかける女性=滝沢美穂子撮影
「男性稼ぎ主モデル」から「女性活躍」への変化の波があります。取り残されていると感じる非正規シングル女性の内なる声に耳を傾けました。
昨年12月上旬、関西地方の下町の一軒家。契約社員の女性(45)は夕飯後、食卓で母(78)が父(78)に漏らした言葉を偶然、耳にした。
「あの子、弁当袋を新しく縫ったんよ。まだ私に作らせる気やわ……」
女性は年金暮らしの両親と同居し、大手菓子店で働く。短大卒業後に就職した会社は正社員だったが、女性の総合職がなく、29歳で退職。正社員としての再就職先を探しているが、年齢や経験不足が壁になり、非正規の仕事を転々としている。いまの給料は手取りで月12万円ほどだ。
非正規になると、母は「貯金に回しなさい」と言って、弁当を作ってくれるようになった。定番は、好物の卵焼きと俵形のおにぎり、前の晩のおかず。「500円弁当を買うから」と伝えても、母は用意してくれていた。
母が漏らした言葉を耳にした日の夜、両親が眠ってから食卓に置き手紙をした。「ダイエットにつき、もう弁当は必要ないです」。それでも翌朝、食卓に少し小さな弁当箱が置かれていた。
40歳を過ぎて、両親とけんかすることが増えた。入浴する時間や掃除のタイミング……。生活習慣や時間が異なり、お互いの将来不安も重なり、感情をぶつけてしまう。さっぱりした性格の母も、何かと心配してくれる父も、最近は疲れが目立つ。
本当は同居をやめて、自立したい。でも、この給料では家賃を払えない。
給料が少なくても、時々行く一…