長崎に投下された原爆で被爆した姉妹2人が、原爆症の認定申請を却下した国の処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が7日、名古屋高裁であった。藤山雅行裁判長は、訴えを退けた一審・名古屋地裁判決を変更して国の処分を取り消し、2人を原爆症と認定した。
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控訴していたのは、長崎で被爆し乳がんなどを患った山田初江さん(85)と、慢性甲状腺炎を発症した妹の高井ツタヱさん(82)。
訴訟では4人が提訴。一審判決は、広島で被爆した男性2人の原爆症を認めて国の処分を取り消したが、姉妹2人は「疾病が放射線に起因する」としたものの医療の必要性までは認めず、原爆症と認定しなかった。
控訴審では、認定にかかる「医療を受ける必要性」の解釈が主な争点になった。藤山裁判長は、積極的な治療が必要かどうかで判断するべきではなく、経過観察で通院した場合も「要医療性があると認めるべきだ」と指摘した。
そのうえで、当時の診療記録などから、山田さんの乳がんと高井さんの慢性甲状腺炎は「経過観察の必要性があった」と判断。医療の必要性がある、放射線による疾病があったと認め、国の処分を「違法」と判断した。
判決後、高井さんは高裁前で支援者に「この日を待ち望んでいました」と喜びを語り、会見では「一日でも生きながらえて、核廃絶に向かって歩きたい」と決意を述べた。弁護団は「国は上告せずに判決を確定させるべきだ」と訴えた。
厚生労働省は「今後の対応については、判決の内容を精査し、関係省庁と協議した上で決めることになります」とコメントした。(仲程雄平)