シリアの首都ダマスカス近郊の東グータ地区で23日、避難用のバスに集まる人たち=AFP時事
内戦が続くシリアで、アサド政権軍は24日までに、反体制派が支配していた首都ダマスカス近郊の東グータ地区の9割を制圧した。反体制派の在英NGO「シリア人権監視団」が明らかにした。抗戦してきた反体制派武装組織のうち二つはすでに撤退を決定。政権側は最後の1組織にも撤退を迫り、完全制圧に向けた動きを強めている模様だ。
地獄の東グータ、逃げたくても逃げられない シリア
反体制派が支配してきた同地区を4年間にわたって包囲してきた政権軍は、激しい空爆と砲撃を加えながら2月下旬に地上作戦を開始。三つの反体制派武装組織の勢力圏ごとに分断して攻略戦を進めた。
シリア国営通信などによると、武装組織「アフラル・シャーム」は22日から撤退を始め、23日までに約1500人の戦闘員を含む住民ら約4600人がバスで反体制派の最大拠点となっている北西部イドリブ県に移送された。また、23日には別の武装組織「ラフマン軍団」も撤退に合意。戦闘員や避難を希望する住民らはシリア北部に移動する見通しになっている。
監視団によると、残る武装組織「イスラム軍」もアサド政権の後ろ盾となっているロシアとの交渉に入っている。政権軍はイスラム軍が拠点とする地区中心部への攻勢を強めながら、撤退を迫る方針とみられる。
監視団の23日の発表では、政権軍が猛烈な爆撃を始めた2月中旬以降、327人の子どもを含む1630人の住民が死亡。負傷者も5400人以上と深刻な人道危機に陥った。(イスタンブール=其山史晃)