ネオンに照らされる京都・木屋町の桜=京都市中京区、佐藤慈子撮影
飲食店が並び人々が行き交う京都・木屋町通り。街中を流れる高瀬川沿いに、桜の木が続いている。
季節の花
四条と五条の間の桜は41年前、金子明さん(83)ら住民が名所を作ろうと自分たちで植えた。当時はほとんどが住宅で、樹木が放置され雑木林のようだった。桜を植えたいと頼んで回ったが、断る家もあった。住宅の多くが飲食店などに変わってきた今も、交渉を続けている。
すでに通りは桜でいっぱいだが「ほんまはもっと京都らしい、しっとりした名所にしたいんやけど」と金子さん。最近は観光客のスーツケースを転がす音が朝から響き、枝を折られることも少なくないという。
日が暮れてネオンの光が桜を照らし始める頃、金髪にエプロン姿の男性(20)が石の上に腰掛けた。「まだ満開ちゃうな」。居酒屋のバイトで客を呼び込む合間にいつも桜の下で休憩する。満開だと空が見えなくなるという。「この季節がやっぱりいい。毎日変化していくのが好きっすね」
仕事帰りのサラリーマン、3世代連れの観光客、カメラを構えるお一人様……。世代も国籍も違う人たちが皆、喧噪(けんそう)の中に咲く桜をじっと見上げていた。(佐藤慈子)