1999年当時のPHS端末(三洋電機製)
ソフトバンクとウィルコム沖縄は19日、個人向けのPHSサービスを2020年7月末で終了すると発表した。携帯電話に押されて利用者が減少し、回復が見込めないためだ。現在国内でPHS事業をしているのは両社だけで、1995年に始まった同サービスが四半世紀で幕をおろす。
サービス終了後はPHSサービスは利用できないが、同じ番号のまま携帯電話やスマートフォンに移行できる。法人向けには、PHSの通信網を使って自動販売機などのデータを集めるサービスは続けるが、19年3月で新規の受け付けは終える。
PHSは「Personal Handyphone System」の略称。95年7月にNTTパーソナル(現NTTドコモ)とDDIポケット(現ソフトバンク)がサービスを始めた。大半が「070」で始まる番号だ。
当初は携帯電話に比べて通話料が安く、若者を中心に「ピッチ」の愛称で人気を集めた。当時の携帯がつながりづらかった地下街や地下鉄駅構内で通話できたのも特長。音声品質の高さや、出力が弱いため電池が長持ちすることも売りだった。契約数はピークの97年に700万件を超えた。
しかし、携帯電話各社が対抗して料金の引き下げを進め、音声品質も改善させたことで、PHSの強みが薄れていった。
さらに2008年に国内で「iPhone(アイフォーン)」が発売されるなどしてスマートフォンが浸透していくと、インターネットのサイトや動画を閲覧するために携帯端末を使う傾向が強まり、通信速度が遅いPHSの利用は減った。
08年にはNTTドコモがPHSサービスを停止。10年にはウィルコム(DDIポケットが社名変更)が経営破綻(はたん)し、ソフトバンクの傘下に入った。
17年12月時点で携帯電話の契約件数が約1億6700万件にのぼるのに対し、PHSは約278万件。ソフトバンクはこのうち個人の利用者数を明らかにしていないが、「愛着をもって使い続けて下さるお客も少なくない」(広報)という。(徳島慎也)
PHS関連の国内での主な出来事
1995年 NTTパーソナルとDDIポケットなどがサービス開始。当時の携帯電話がつながりづらかった地下街や地下鉄駅構内での通話も実現
1997年 契約件数が700万件を超えてピークに
1998年 NTTパーソナルがPHS事業をNTTドコモに譲渡
1999年 携帯電話とPHSの電話番号が1桁増え、PHSは最初の3桁が「050」「060」から「070」に変わる
2001年ごろ 携帯電話端末と前後してPHS端末も多機能化
2005年 DDIポケットがウィルコムに社名変更
2008年 NTTドコモがサービス停止
2010年 ウィルコムが経営破綻(はたん)し、ソフトバンクの傘下に
2013年 携帯電話でも「070」の番号が使えるように
2020年 ソフトバンクがサービス停止(予定)