セクハラ発言を繰り返したと報じられた財務省の福田淳一事務次官について、政府は24日午前の閣議で辞任を承認した。福田氏がセクハラをしたかどうかについては調査を続けるとして認定せず、処分を先送りした。相次ぐ不祥事で麻生太郎財務相の辞任を求める声が高まるのは必至で、国会運営をめぐる混乱にも拍車がかかりそうだ。
財務次官が引責辞任するのは1998年の旧大蔵省時代の接待汚職事件以来、20年ぶり。福田氏の後任は当面、同省の矢野康治官房長が代行する。財務省では、森友学園の公文書改ざん問題で佐川宣寿・前国税庁長官が先月辞任したばかりで、次官級幹部が相次いで不在となる異例の事態に陥っている。
麻生氏は閣議後の記者会見で「事務方のトップである事務次官が自身のセクハラ疑惑によって辞職するような事態に至ったことははなはだ遺憾だ」と述べた。そのうえで「早急に事実関係を解明して、結果に応じて処分を行いたい」とした。自らの進退については「考えていない」と話した。福田氏には、調査の結果、懲戒処分に相当すると判断した場合は約5300万円にのぼる退職金を減額することや、退職金の支払いを当面留保することを伝え、了解を得たという。
福田氏は今月18日、セクハラ疑惑をめぐる一連の混乱を受け、「職責を全うできない」として辞任を表明し、麻生氏が辞表を受理した。その後、テレビ朝日は女性社員が福田氏からセクハラを受けたと抗議したが、福田氏はセクハラの事実を否定し、裁判で争う考えを示している。
麻生氏は処分を先送りした理由について「(福田氏が)はめられて訴えられているんじゃないかとか、ご意見はいっぱいある。本人と向こうの話を伺った上でないとなかなか決められない」と説明した。
福田氏は今後も調査に協力する意向を示しているというが、このまま事実と認定できなければ、セクハラに対する処分があいまいなまま、幕引きとなる可能性がある。
野党はセクハラの責任があいまいになるとして、福田氏を辞任前に処分するよう求めていた。このため、政府の決定に一斉に反発した。立憲民主党の辻元清美国会対策委員長は24日午前、記者団に「調査、調査と言って問題を先延ばしにして、ほとぼりが冷めるまで時間稼ぎをしているように見える」と批判した。野党合同ヒアリングでも「セクハラ容認政権となった。強く抗議する」などと批判が相次いだ。