白磁のような「白色長頸瓶」(清時代 おそらく雍正年間〈1723~35年〉)東京国立博物館蔵
中国・清の時代に飛躍的に発展したガラス工芸品を紹介する展覧会「ガレも愛した 清朝皇帝のガラス」(朝日新聞社など主催)が25日、東京・六本木のサントリー美術館で始まるのに先立ち、24日、報道向けの内見会があった。重厚な質感と繊細な研磨技術による作品は玉(ぎょく)や陶磁器のようで、「透明」「もろい」というガラスの常識を覆す。洗練された美しさは、フランスのアール・ヌーボーを代表する装飾芸術家エミール・ガレを魅了。影響を受けたガレの作品も、合わせて展示している。
中国のガラスは紀元前5世紀~同3世紀にさかのぼるが、飛躍的に発展したのは、清朝第4代・康熙帝(在位1661~1722年)の時代だった。イエズス会のイタリア人宣教師が1689年にガラス製花器などを献上。「おそらくベネチアングラスでしょう」と推測するのは、サントリー美術館の土田ルリ子・学芸副部長。高い装飾性を誇る工芸品との出会いをきっかけに、皇帝が工房を開かせた。第5代雍正帝、第6代乾隆帝も引き続きガラス製作に力を入れ、デザインと技術が進化した。
土田さんによると、清朝ガラスはまず、黄や緑など多くの色がある。さらに、色違いの二層のガラスのうち表層部の意匠を浮き彫りにする「被(かぶ)せガラス」の手法が発達した。玉を珍重した中国独自の加工技術が応用されたという。
こうした工芸品は19世紀後半、ヨーロッパで開かれた万国博覧会に出品された。ガレは1870年代初期には興味を持ってコレクションを始めたという。
影響は、玉を模したガラス作品、被せガラスの技法、花をその形のまま器にするデザインなどに表れているという。清朝ガラスとガレの作品を並べるコーナーもあるが、説明がないとどっちの作品か分からなくなりそうだ。
サントリー美術館は「北京の故宮博物院でも、清朝ガラスは常設展示をしておらず、これだけの作品を見られる機会はあまりない」としている。
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展覧会は7月1日まで。火曜休館(5月1日、6月26日は開館)。一般1300円、大学・高校生1千円、中学生以下無料。