慈恵病院がめざす「内密出産」の仕組み
親が匿名で赤ちゃんを預けられる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院(熊本市西区)は7日、予期せぬ妊娠をした母親が匿名で出産し、子どもは後で出自を知ることができる「内密出産」の仕組みの素案を熊本市に示した。出自情報は児童相談所が管理し、子どもが18歳以上になれば閲覧できるとした。
内密出産制度「大きな希望」 熊本・慈恵病院で勉強会
同病院の蓮田健副院長が市役所を訪れ、報告した。
仕組みの核は市の児相だ。病院が匿名での相談と出産に対応する一方で、児相は母親と面談し、母親の実名や住所といった出自の情報を保管する。子どもが18歳以上になれば、子どもの請求に基づき閲覧を可能にする。母親が閲覧を拒否する場合は、家庭裁判所に判断を委ねる。
市は、病院から母親の仮名と母親が希望する子どもの名前候補の提供を受け、子どもの名前を決定し、子どもの戸籍を作成する。出産費用は特別養子縁組をした養親の負担を想定する。
慈恵病院が内密出産の実現を目指すのは、1人で出産した危険な例が多いことや、こうのとりのゆりかごに対し、子どもが出自を知ることができないとの批判があるためだ。
熊本市の大西一史市長は内密出産には「法整備が必要」として、厚生労働省に要望活動をしていた。市の担当者は「内容を検討して、法的な問題点や課題を指摘したい」と話した。
一方、蓮田副院長は記者団に「法整備は何年も先になり、待っていられない。危険な『孤立出産』を防ぐため、市の協力を得て緊急避難的に早期に始めたい」と語り、法整備前に実施したい意向を示した。市の協力が得られなくても、出自情報の管理方法などを弁護士らと相談し、実施に踏み切る可能性も示唆した。
厚労省は今年度、内密出産に関する海外の事例研究をする予定。家庭福祉課の成松英範課長は「案を見ていないので、具体的なことは言えない。熊本市からの相談があれば対応したい」と語った。(大畑滋生、浜田知宏)