浅井伸治さんの提供した魚介類を食べる子どもたち=熊本市西区
「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)で知られる慈恵病院(熊本市)が「エンゼルこども食堂」を開いて1年が過ぎた。貧しかった自らの経験から「子どもを腹いっぱいにしたい」という人々に支えられ、毎週木曜、無料で食事を提供している。
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今月上旬の夕方、授業を終えた小学生らが病院内のこども食堂に集まってきた。メニューはマグロと野菜のタルタル丼、ナスの揚げ浸し、レタスとトマトとキュウリの冷製サラダうどん。アイスクリームもある。「マグロだって!」「おいしい!」「ピーマン食べられた――」。入れ代わり立ち代わり訪れる約80人の楽しそうな声や笑顔が絶えなかった。
食堂は昨年4月末に開設された。食材やソースはほとんどが寄付されたものだ。
この日朝、熊本市の田崎市場で鮮魚店を営む浅井伸治さん(55)は、こども食堂用に新鮮なマグロの腹トロを仕入れた。「おいしいものを食べてもらいたいからね」と笑う。
1年前、こども食堂の開設を新聞で知り、協力を名乗り出た。月に2回ほど魚介類を提供する。代金はいらないと伝えているが、「時々はお支払いしないと心苦しい」と言われ、今回は少しだけ受け取った。
浅井さんは熊本市出身。一時期を施設で過ごし、中学卒業後は全国を転々とした。大阪市西成区の日雇い労働者宿舎に泊まり込んで働いたこともある。そんな経験から、孤児院で育った人や少年院を出た少年に移動販売車で魚を売るノウハウを教え、約30人を自立させた。「食べることは幸せを感じること。少しでも協力したい」
匿名で毎月2万円を送ってくる…