衰弱して横たわったゾロメ(左)のそばに現れたダンダン(右)。胸元に生まれたばかりの赤ちゃん「ソダネ」を抱いていた=8日、大分市の高崎山自然動物園、同園提供
大分市の高崎山自然動物園のC群の元ボスザル「ゾロメ」が死んだ。31歳。伝説のボスザル「ベンツ」の側近として活躍し、失踪したベンツが群れに戻った際は受け入れを決断し、再びそばで守った。メスや子ザルにも優しく、死の直前には子ザルたちに囲まれ、毛づくろいをうけた。
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ゾロメはベンツの先代ボス「ゾロ」の弟。園の藤田忠盛さん(47)によると、サルの群れの間では以前は激しい抗争があり、ゾロメはベンツのすぐ後ろでサポートするように闘った。
ベンツが失踪騒ぎを起こした2013年。3週間ほど群れを離れたベンツは他のサルの総攻撃を受けてもおかしくなかったが、ゾロメが実質トップとして2番手以降を牽制(けんせい)。体力が衰えたベンツに排斥の動きを見せる若手から守った。
2014年2月にC群10代目ボスに就任。16年4月にその座を譲り、17年1月にはB群のメスの猛アタックを受けてB群に移った。
8日午前、ゾロメはC群がいるサル寄せ場に姿を現した。古巣とはいえ別の群れ。だが現在のボス「ブラック」は周辺をうろついたが手は出さず、他のサルもならった。
その後、20匹ほどの子ザルが、弱々しく座り込むゾロメに群がって臭いをかぎ、シャーロットなど数匹が毛づくろいをした。いずれも異例の光景という。
午後に現れたB群はゾロメに近づかなかったが、メスのダンダンだけはそばに来た。胸元には生まれたばかりの赤ちゃん。ゾロメの様子を見に来た職員が気づき、この時、今年第1号の赤ちゃん「ソダネ」の発見となった。ゾロメはB群でもメスに人気だったといい、藤田さんは昨年と今年の赤ちゃんにはゾロメの子も多いとみる。ゾロメは翌9日朝、建物の通路で死んでいるのが確認された。
園は功績をたたえ、「おさる資料室」にゾロメコーナーを設ける予定だ。(寿柳聡)