2018年度入試の志願者の延べ数と実数
入試の志願者を「延べ人数」だけでなく、「実数」として公表する私立大学が増えている。2018年度入試では延べ志願者の上位10大学(大学通信調べ)が全て、実数も公表した。これまで各大学は延べ志願者数を元に「過去最高」などとアピールしてきたが、1回の試験で複数の学部や学科を併願できる入試が増えたこともあり、「実態を反映していない」と批判が出ていた。
18年度の一般入試で延べ志願者数が最も多かった10大学に朝日新聞が確認したところ、近畿、法政、日本、中央、千葉工業の5大学は今年度から実数を公表するようになった。明治、早稲田両大も昨年度から実数を明らかにしている。5年ほど前から公開する東洋大の加藤建二入試部長は「志願者の延べ数と実数は実態が少し違い、以前から実数を公開すべきだとの声があった」と話す。
実際、延べ人数と実数には開きがある。各校の状況を見ると、延べ人数の実数に対する割合が最も小さいのは明治の1・96倍。7大学は2倍から3倍の間で、近畿、千葉工業は5倍以上だった。近畿大は「受験生の要望を受け、1回の試験で複数の学部を併願できる制度を整えてきた」、千葉工業大は「総合大学と違って、理系の関連した学科ばかりなので、そもそも併願しやすい」とする。
これほどの開きがある理由は、入試制度の変化にある。かつては学部・学科ごとに受験をしなければならなかったが、この20年ほどで一つの試験を受ければ複数の学部・学科を志願できる入試が広まっている。例えば、千葉工業大の場合は1回の試験で最大17学科を併願できる。また、複数学部を併願すれば受験料を割り引く大学もあり、併願をする受験生が増えているとみられる。
受験の状況に詳しい大学通信の安田賢治常務は「延べ志願者の増加は宣伝効果が大きく、各大学が競い合っている」と指摘する。「実数も分かれば、受験生は冷静に志望校を分析できるのではないか」と話す。
ただ、各大学が積極的に実数を公表しているとは限らない。朝日新聞が確認した10大学のうち6大学は「聞かれれば答える」対応で、ホームページなどに載せているのは延べ人数だけだ。大学関係者によると、公表の判断にあたっては他の大学の状況を確認し、足並みをそろえた大学もあり、神経をとがらせている様子がうかがえる。(峯俊一平)