カリフォルニア州政府やサンフランシスコ市議会などから贈られた、敬意を表する賞状を手にする森さん夫妻=サンフランシスコ、宮地ゆう撮影
広島に投下された原爆で亡くなった米国人捕虜の遺族を捜し続け、広島を訪問したオバマ前米大統領と抱擁を交わした森重昭さん(81)が初めて米国の土を踏んだ。25日、森さんの活動を追った映画の上映会がサンフランシスコで開かれ、地元の市民らが拍手で長年の活動をねぎらった。
核なき世界 模索の8年-オバマ米大統領、広島へ
渡米は「森さんを米国に招待しよう」というネット上の募金で実現した。森さんは飛行機に乗ったのも初めて。「霧の中を降りられるのかと思った」と笑った。「機中から外を見て、こんな大きな国と戦争をしたのか、なんて無謀なことをしたのかと思った」と、初訪米の感想を語った。
サンフランシスコ市内では、被爆死した米兵の家族を捜し続けた森さんの足跡や、米国の遺族との交流を描いた映画「灯籠(とうろう)流し(原題・Paper Lanterns)」(2016年)の上映会が開かれた。
制作した米国人のバリー・フレシェット監督は「米国の誰より米国人兵士のために力を尽くした森さんの話を聞いたとき、特別なものを感じた」という。「戦争によって日本も米国もあまりに多くのものを失った。戦争を経験した人は、死ぬまで忘れられずにいることを伝えたかった」
観客は、映画が終わるとスタンディングオベーションで森さんをたたえた。森さんは「途中で遺族捜しをやめなくて良かった。天国にいる12人の米兵のスピリットが背中を押してくれたと思う」と涙をぬぐった。
森さんはこの後、ボストンやニューヨークなど東海岸をめぐる予定だという。(サンフランシスコ=宮地ゆう)