名物のいか焼き=2018年5月31日午前、大阪市北区、加藤諒撮影
みなさん、「いか焼き」と聞いて思い浮かべるものは何ですか?
阪神百貨店、名物「スナパー」復活 いか焼きもその場で
東京の下町、葛飾区出身の記者(26)にとっては、鉄板で丸ごと焼いたイカ。縁日などの屋台料理の「定番」で、甘塩っぱいあの味を思い出します。しかし、多くの関西出身者は「阪神の粉モン」だと口をそろえます。阪神百貨店梅田本店の改装オープンに合わせ、阪神名物を取材しました。
阪神電車の初乗り料金と同じ
4月に広島から大阪に赴任して驚いたことの一つが、梅田本店(旧店舗)の地下にできる行列。店の入り口の外まで延びる行列の先には、「いか焼き」と書かれた看板。さらに値段を見ると、税込み152円。とにかく安い。関東ならば500円程度なのにと、衝撃を受けた。よくよく見ると、クレープのような、お好み焼きのような、イカの存在感はさほど感じられないものが次々と売れていく。実際に食べてみると、ダシの利いたもちもちの食感にまた驚いた。なにものにも比較しがたい……。
阪神のいか焼きは、ダシとメリケン粉(小麦粉)、1センチ角にカットしたゲソ(イカの足)を練り合わせ、約180~200度に熱した上下の鉄板で挟んで一気に焼き上げる。焼き上がったいか焼きは、平たくて丸い。それを焼き手が鉄板からはがし、ぽんぽんとベルトコンベヤーに乗せてレジ横まで運ぶ。ハケで酸味のある特製のソースを片面に塗って、それを内側に折ったら完成だ。1日平均8千枚。多い日は1万枚超を売り上げる。
阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリングによると、いか焼きは阪神百貨店が開店した1957年に売り出した。阪神電車の初乗り料金と同じ価格で知られ、いまもいか焼きの税抜き価格は初乗り料金(140円)を維持している。
卵入り「デラックス」も
種類もさまざまだ。オーソドックスないか焼きのほか、「デラバン」(税込み206円)、「和風デラ」(同216円)がある。デラバンはデラックス版の略で、いか焼きに卵を加えたもの。和風デラはデラバンにさらにネギを加え、しょうゆ味で仕立てた。卵を加えるだけで、「デラックス」と呼ぶ強気。卵が高価だった時代の名残を感じさせた。
関西人は、関東のいか焼きをどう思っているのか。
いか焼き店「阪神名物いか焼き」の東原勇貴店長(32)は、「イカを丸ごと焼いたものは、こっちでは『姿焼き』と呼んで区別します。全くものが違うのでライバルではないですね」と笑う。6月1日に復活した阪神百貨店梅田本店のスナックパークでは、これまで持ち帰りのみだったいか焼きがその場で食べられるようになる。ビールと合わせれば、「スナック」以上のさらなる魅力を味わえる。(久保田侑暉)