佐賀県歯科医師会のPR動画の一場面(同会提供)
一見真面目な歯医者のインタビュー。その最中に突然、背後に白装束の女性の姿が。垂れ下がった髪に覆われた顔はよく見えないが、ニタリと開いた口に白い歯がのぞく……。画面はモノクロに切り替わり「おわかりいただけただろうか?」。実はこれ、佐賀県歯科医師会のPR動画だ。では、なぜこんな動画を?
白装束、長髪の不気味な女性は佐賀のご当地アイドル「ピンキースカイ」の園田有由美さん扮する「佐歯子(さばこ)」。「歯の妖精」との設定で、決めゼリフは「は(歯)~っ」だ。
動画は約3分~約1分半の3本あり、うち約1分半の「歯の妖精とゾンビ」編では、歯ブラシやデンタルフロスを持ち、コミカルに動く。現役の歯科医もゾンビの特殊メイクで出演し、画面に向かって目をむく。動画の狙いは歯の健康に関する啓発。ただ、歯科医師会も歯科医師「怪」とする徹底さも見せる。
「有明海のエイリアン」とも呼ばれる珍魚ワラスボを起用し話題になった佐賀市のPR動画「W・R・S・B」などを作った佐賀広告センターが手がけた。19日に会見した同社の宮副直記取締役は、ネット上ではホラー調のものがよく見られているとして「真面目な団体ほど見てもらえない傾向があるが、強く印象づけられるものになっていると思う」と話した。
会によると、これまでも会の活動や虫歯予防についての動画は作っていたが、広がりは見られなかった。「佐歯子」はイメージにそぐわないのでは、などと激しい議論があったが「若者に興味を持たれないなら将来、会の意義はあるのか。今までにないやり方を」といった若手の意見が通ったという。
会見に同席した県歯科医師会の寺尾隆治会長は「会の目的は治療以前に口の健康を守ることだが、なかなか健診を受けてもらえない」とインパクトにこだわった理由を説明。「映像を見て、歯を大切にすれば健康で長生きできると知ってほしい」と訴えた。