新潟県湯沢町の苗場スキー場で開かれた「フジロック・フェスティバル2018」は、最終日の29日にボブ・ディランが登場した。16年のノーベル文学賞受賞後初の来日公演を、音楽評論家の岡村詩野さんが評した。
当初の開始時間より3分ほど早く、その男はそこに現れた。挨拶(あいさつ)もなし、声援に応えることもなし。黙ってピアノの前に座りいきなり演奏が始まる。見る人によっては無愛想に感じただろうか。けれど、そこにいた誰もが巨大モニターに映されたその男が時折のぞかせる笑顔に頰を緩めた。と同時に、このただただスッとそこにいる凜(りん)とした存在感はなんだろうかと感じたのではないだろうか。
ボブ・ディランが「フジロック…