米トランプ政権は2日、オバマ前政権が定めた自動車の燃費規制を大幅に緩める方針を明らかにした。カリフォルニア州などが独自に厳しい環境規制を課すのも認めない方向。同州などはこの規制緩和を不服として訴訟を起こす構えで、争いが長引く可能性もある。
米環境保護局(EPA)と米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が規制見直しの具体案を公表した。オバマ政権が2012年に決めた基準は、平均燃費を25年までに1ガロンあたり約47マイル(1リットルあたり約20キロメートル)まで段階的に改善するよう求めている。これを20年の基準(1ガロンあたり約37マイル)で凍結する。
電気自動車(EV)などの普及に向け、カリフォルニア州が独自に厳しい環境規制を定める権限を持ち、一部の州がそれに同調しているが、こうした仕組みの撤廃も提案した。パブリックコメントで意見を募ったうえで、冬にも最終案を固めるという。
米当局は、規制を緩めることで車の価格が下がれば、より安全な新型車が消費者に渡り、死亡事故が減るなどと主張。燃料の消費は2~3%増えるが、大気汚染への影響は無視できるほど小さいとした。チャオ運輸長官は「より現実的な基準にすることで、新しく安全で燃費の良い車が普及し、健全な経済につながる」と述べた。
この提案に対し、カリフォルニア州のブラウン知事は「全米国人の健康に対する攻撃だ。燃料の支払いが増え、汚い空気を吸わされる。考えうる限りの手段でこの愚行と戦う」と徹底抗戦を宣言。同州の規制に同調してきたニューヨーク州など20州は、撤回を求めて訴訟を起こす方針だ。
厳しい燃費規制はオバマ政権による環境政策の柱の一つで、自動車業界は基準が厳しすぎると主張してきた。トランプ政権は地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」からの離脱をすでに表明しており、産業界に配慮して環境規制を緩める姿勢を強めている。(ワシントン=江渕崇)