神戸市中央区の兵庫県立美術館で「没後130年 河鍋暁斎(かわなべきょうさい) 鬼才!Kyosai!」展が開かれている。幕末明治の人気絵師・河鍋暁斎(1831~89)の錦絵や花鳥画、屛風(びょうぶ)や絵馬、創作過程を示す下絵類など海外からの里帰り作品を含む約200点を前・後期に分けて展示。幅広い画業を紹介する。風刺のきいた作品や美女と骸骨が登場する作品など、「鬼才」の画業を堪能できるほか、下絵からは修正を重ねた様子も伝わってくる。
江戸で育った暁斎は幼い頃、浮世絵師の歌川国芳に入門した後、狩野派にも学び、伝統絵画の技法も習得。確かな技巧を駆使して、幕末明治の激動の時代に合わせ、多彩な作品群を生み出した。
「河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)作『漂流奇譚(きたん)西洋劇(かぶき)』パリス劇場表掛(おもてがか)りの場」は人気芝居の宣伝のための行灯(あんどん)絵。幕府の長州征伐をカエルの合戦に見立てた「風流蛙大合戦之図」などの風刺画も数多い。注文に応じて描いた奉納額や引き幕のほか、彼の絵は硯(すずり)など工芸品にまで及ぶ。
今展では、多くの下絵や写生、錦絵のための版画に彫る前の版下絵なども多数並ぶ。和紙を部分的に貼って描き直したり、胡粉(ごふん)を塗って線を消したりと修正の苦心の跡が生々しい。「惺々(せいせい)暁斎下絵帖」には、フランス人実業家ギメのために描いた「釈迦如来図」の下絵もあり、朱で何度も修正した跡が見て取れる。亡くなる直前まで毎日つけていた絵日記からは、日々研鑽(けんさん)を重ねていた様子もうかがえる。
暁斎は、弟子にした英国人建築家コンドルら大勢の西洋人とも親交を深めた。その一人、お雇い外国人のドイツ人医師ベルツが収集した暁斎作品のうち7点が、現在所蔵するドイツのビーティヒハイム・ビッシンゲン市立博物館から出品されている。骸骨となっても美女の色香に迷う男たちを描いた「美女の袖を引く骸骨たち」など、暁斎ならではの滑稽味あふれる作品が目にできる。
前期は29日まで。後期は30日~5月19日。休館は月曜と5月7日(4月29日と5月6日は開館)。一般1400円など。兵庫県立美術館(078・262・0901)。(池田洋一郎)