愛知県の渥美半島に「骨太」の縄文人集団がいたことが、国立科学博物館などの研究チームの分析で分かった。全国の遺跡から出土した縄文人の上腕骨を比較したところ、縄文晩期の遺跡「保美(ほび)貝塚」(同県田原市)から出土した男性の上腕骨は、他の遺跡よりも極端に太かった。手足の骨は活動レベルに応じて太く成長する性質があるという。この集団は近隣の集団よりも積極的に遠州灘まで漁に出ていたり、紀伊半島から海路で石を大量運搬したりしていたといい、舟をこぐ生活が関係していると考えられるという。
海部陽介・同博物館研究グループ長らの研究チームは、沖縄県から北海道の遺跡で出土した縄文人797人分の上腕骨の太さを比較した。その結果、海岸付近の遺跡の縄文人集団は、内陸の平野で暮らした縄文人集団より上腕骨が太い傾向がみられた。さらに、保美貝塚の男性の上腕骨は22人全員が全国平均を上回っていた。また、渥美半島の近隣の遺跡と比べても極端に太かった。一方、保美貝塚の女性の上腕骨は、他の遺跡と大差はなかった。
保美貝塚からは外海にいる大きなマダイやアシカの骨が見つかっているほか、近畿地方の二上山でとれるサヌカイトという石が紀伊半島から海路で大量に搬入されていたと指摘されている。それに対し、渥美半島の近隣の縄文遺跡では舟で遠出をした形跡が見つかっていないという。(神田明美)