91歳で亡くなった田辺聖子さんと親交が深かったエッセイストの酒井順子さん(52)が10日、朝日新聞の取材に対し、田辺さんとの思い出などを語ってくれた。
「人生の贈りもの」「おせいさん気まま語り」など、過去の記事で振り返る田辺聖子さんの足跡
酒井さんは、朝日新聞夕刊紙上で2006年に田辺さんと往復書簡のやりとりをした。「品性と教養を備えつつ、ユーモアと共に文学を紡いだ稀有(けう)な女性作家。重しが外れたような寂しさを感じます」と語る。
婚期を過ぎた「ハイミス」の女性をいきいきと描いた作品に10代の頃から親しんだ。独身でいることを積極的に楽しみ、人生の力に変えていく女性が主人公の作品は「現代を生きる女性たちをも元気づける力を持つ」と評する。
15年ほど前に兵庫県伊丹市にある田辺さんの自宅を訪ねたという。田辺さんの印象について「かわいらしさと知性が両立していた」。そのときに投げかけられた、「小説って、せっけんやタオルのように人生でザブザブ使うものよ」との言葉がいまも心に残っている。「小さな存在でも、気持ちよく、爽快にさせてくれる。創作にはそのような力がある、と教わりました」
古典にも詳しかった田辺さん。「深い知識に基づき、古典を現代に生かす手法に感銘を受けていました。私にとって目標となる、遠くに輝き続けるあたたかな光のように感じていた。ずっとお元気でいらしていただきたかったです」と別れを惜しんだ。(机美鈴)