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リーマン・ショックから、15日で10年を迎える。大規模な金融緩和策が功を奏し、米国を先頭に先進国の景気は持ち直した。一方で格差が広がり、ポピュリズムの台頭など「分断」が進む。世界は未曽有の金融危機から何を学び、どこに向かおうとしているのか。
元米財務長官 ティモシー・ガイトナーさん
財務省で駆け出しのころから、世界の金融危機に取り組む人々に仕え、危機の時に欠かせない対策と一般に理解される政策との間には、深い溝があると学びました。
1961年生まれ。財務官僚として90~92年に日本駐在の経験も。2003~09年にニューヨーク連邦準備銀行総裁、09~13年に財務長官を務める。現在は投資会社ウォーバーグ・ピンカス社長。
ティモシー・ガイトナー氏=ワシントン、ランハム裕子撮影
恐慌時には、利益を受けるに値しない銀行家にも利益をもたらすようにみえる対策を取らないと、銀行を「救う」ことは難しく、金融パニックが起き、大規模な失業を招いてしまう。こうした政策は不興を買うため政府は及び腰で、さらに被害が拡大します。
1990年代に駐日米大使館に勤めた経験もあり、私は日本人がバブル崩壊後に直面した課題をよく理解しているつもりです。日本の政策決定者たちの戦略は非常に漸進的で、経済成長を遅らせ、資本の配分も非効率にしてしまいました。日本から学んだのは、金融システムの最も脆弱(ぜいじゃく)な部分をできるだけ早く一掃すべきだということです。こうした理解は、前任のポールソン財務長官や、バーナンキ元米連邦準備制度理事会(FRB)議長も共有していました。
一方、金融危機後の欧州の債務危機で、欧州連合(EU)も米国よりずっと漸進的な戦略で金融システムの再編に臨みました。EUは財政や金融行政が一元化されておらず、危機からの回復はより難しかった。米国以上に破壊的な政治的影響も、もたらしたのです。
過去の金融危機を振り返ると、その後の回復期には、極端な主張が強まる政治の「分極化」が長期にわたって起こります。ポピュリストが悪用しやすい環境が生まれてしまう。それは、我々の経験した金融危機にも当てはまります。
ただ、危機前の数十年間で、米…