優れた文学作品に贈られる谷崎潤一郎賞の贈呈式が9日都内であり、「焰(ほのお)」(新潮社)で同賞を受けた星野智幸さんが受賞の言葉で、LGBTをめぐる企画で批判を受け休刊した「新潮45」の問題をとりあげた。「出版業界が差別の感覚に疎くなっている」「差別的な言葉が社会を動かしつつある現実を文学はないがしろにしてきたのではないか」と危機感を語った。
「焰」は憎悪や差別の言葉を物語に意識的に取り入れた連作短編集。「私たちの生きる社会が憎悪に覆われていくなか、憎悪に与(くみ)しない、憎悪に巻き込まれないための拒絶」という意志を込めた作品。「まさにその憎悪が新潮社の雑誌を乗っ取ってしまった」と続けた。
受賞の連絡を受けてまもなく、「新潮45」で特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」が批判を集めて休刊に。「焰」についても「新潮社刊行なので今は買うことはできない」と言われたことを明かし、「僕が一緒に本作りをしたひとたちは憎悪に加担していない、加担はしないという本を一緒に作ってくれた」と述べた。
「文学の書き手たちは、文学は…