ポール・マッカートニーがやってきた。約2年前、一生忘れられない体験をした親子は、今回の来日を心待ちにしていた。
2016年6月、名古屋市瑞穂区の税理士武山卓史さん(48)と高校1年生の次男順哉さん(16)は、ポールの欧州公演のために旅へ出た。当時、中学2年生だった順哉さん。前年の東京公演を初めて見て、父に勝るとも劣らないほどの熱狂的ファンになった。
ベルリン公演で自由席だった最前列に陣取った。ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のコスプレ姿の親子は、英語メッセージを記した紙の横断幕を自作し掲げていた。
アンコールで名曲「イエスタデイ」が終わった後、突如ステージに招かれた。
数万人の目が注がれる。ポールが少年に尋ねた。「どこから来たの?」「名前は?」。ジョン・レノンよろしくひげをつけた順哉さんが「I’m from Japan(日本から来ました)」「My name is Junya(順哉です)」と自己紹介すると、歓声が起きた。ポールが、卓史さんの横断幕を続けて読んだ。
「あなたのために、息子は日本の学校を5日間休みました。なので、お願い欠席届にサインして」
会場が笑いに包まれる。ポール…