大統領トランプの誕生は、かつて製鉄業や製造業が栄え、民主党の地盤だったラストベルト(さび付いた工業地帯)の「労働者の街」の選挙風景を一変させた。記者が2年前の大統領選の頃から通うオハイオ州ヤングスタウンがある同州下院第13選挙区の選挙を追った。
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「民主党が長く議員をやっている間に、多くの雇用がなくなったではありませんか」
10月23日朝、白人高齢者が集まる喫茶店で共和党候補クリス・デピーゾ(31)がテーブルを回っていた。
オムレツを食べていた私の席にも来たので「民主党が強い選挙区でどんな訴えが有効ですか」と聞くと、「メッセージはジョブ(仕事)。『私はあなたによい賃金の仕事を見つけて欲しい』と訴えている」。2年前、地区で支持を集めたトランプ流の言葉だ。
自動車部品工場の元労働者で、長年の共和党員シャーリー・トンプソンは「街を共和党候補が回っているなんて新鮮だ。そろそろ共和党支持と名乗っても大丈夫かもしれない」とデピーゾを激励していた。
「労働者は民主党、金持ちは共和党」。そんなイメージが残る土地柄で選挙区は長く民主党現職ティム・ライアンの牙城(がじょう)だった。共和党員をやる気にさせたのは、2年前に白人労働者の支持を集めたトランプだ。同選挙区にあるトランブル郡では、1972年のニクソン以来初めて共和党候補として勝利した。
投開票日まで残り2日に迫った日曜には、選挙区の共和党支部で、ボランティアが有権者に電話をかけていた。リーダーのコニー・ケスラー(78)は「これまでまともな候補者も擁立できず、選挙運動もできなかったが、トランプが変えた。中間選挙での盛り上がりを、次の大統領選につなげたい」と話した。
2年前に共和党員に転じた元警察官ドナルド・スコウロン(72)は「選挙で忙しくて、春から一度も昼寝していない」と冗談を言いながら、民主党からの決別を呼びかける看板を作っていた。2年前の大統領選でもやった。通りに看板を立てるのが痛快で仕方ない様子だ。
「共和党がこれだけやれば民主党もびびるだろう」
■「いずれ(民主党に)戻ってく…