宅配物が届いたときに不在でも、受け取ることができる宅配ボックス。その中から届いた商品が盗まれる事件が、昨年から今年にかけて埼玉県川口市などで相次いだ。帰省や旅行で不在がちな年末年始にも助かる存在だが、警察も宅配業者もこれといった対策が打てていないのが現状だ。
さいたま地裁で先月、男(39)に窃盗罪で懲役2年執行猶予3年の判決が言い渡された。判決などによると、男は5月に東京都足立区の集合住宅の宅配ボックスに届いた眼鏡を、昨年11月には川口市のマンションで宅配ボックスに届いたフィギュアを盗んだ。
宅配ボックスは宅配業者が暗証番号を決めて不在連絡票に書き込み、住民が番号を入力して解錠するタイプだった。住宅部品の研究などをしている一般社団法人リビングアメニティ協会(東京)によると、建設時はなかった集合住宅にも簡単に導入できるため、人気だという。
手口はこうだ。新聞紙を丸めてテープを巻き付けた棒をポストに差し入れ、宅配業者が入れていく不在連絡票をくっつけて取り出す。そこに書かれた暗証番号で宅配ボックスを解錠。中の品を盗んで転売し、生活費に充てていた。
県警は2月、大手宅配業者に注意喚起のチラシを配った。事件が相次いでいることや、不在連絡票を抜き取られないよう中に確実に入れることを呼びかけた。
川口の事件で荷物を届けた宅配業者は、不在連絡票の抜き取りは想定していなかったという。届けたことを伝えるには、連絡票を入れるしか今のところ手段がなく、ボックスを使わないのもクレームにつながり難しいという。担当者は「最新のボックスだと、配達が部屋に通知されるものもある」と、マンションやメーカー側の対策に期待する。(米田悠一郎)