伊藤忠商事は31日、スポーツ用品大手のデサントに対して株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。伊藤忠はデサント株を30・44%持つ筆頭株主で、株の買い増しにより割合を40%に高める。デサントの経営陣の刷新などを求めていくとみられる。
伊藤忠は子会社を通じ、1株あたり2800円で最大721万株を買い付ける。取得総額は約200億円。
デサントの経営方針をめぐっては、両社が対立している。伊藤忠は今回、「デサントの経営体制に大きな懸念を抱いている」として買い増しに踏み切った。TOBが成立して保有株が「3分の1」を超えると、伊藤忠は重要案件への拒否権を持つことになり、デサントに対する関与が強まる。
伊藤忠は、デサントの業績が伸び悩んでいることや、韓国事業への過度な依存を懸念し、昨年7月からデサント株を少しずつ買い増してきた。一方、デサントは同8月に下着大手のワコールホールディングスとの業務提携を「伊藤忠抜き」で決めるなどし、関係が悪化していた。
この間、伊藤忠とデサントのトップ同士が協議する機会が持てない状況が続いているという。伊藤忠幹部は「拒否権を持つことで、まずは話し合いのテーブルについてもらうようにする」と説明する。デサントの広報担当者は「事前に連絡がなかった。これから対応を検討する」とコメントした。