中国・長江流域の広富林遺跡(上海市)で、約5千年前の女性の人骨に、東アジアで最も古い結核の痕跡が見つかった。岡崎健治・鳥取大学医学部助教、高椋浩史・土井ケ浜遺跡・人類学ミュージアム学芸員、と陳傑・上海博物館研究員らのグループが確認し、米国の学術誌「International Journal of Paleopathology」に発表した。 日本で最古の結核は弥生時代後期の青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡(約2千年前、鳥取市)で確認されており、この感染症の拡散ルートを知る上で重要な発見と言えそうだ。 論文によると、この人骨は2010年の発掘調査で見つかった。300基ほどある新石器時代の墓の一つに仰向けに葬られていた。中国・長江流域における人類の農耕適応のあり方などの研究に取り組む岡崎助教らが調査し、年代測定なども含めて検討した結果、約5900~5200年前のものと判明した。 特徴的なのは、背骨の胸椎(きょうつい)と腰椎(ようつい)の一部に、結核が原因で骨が溶解・癒合する病気「脊椎(せきつい)カリエス」の症状が認められたことだ。 広富林遺跡があるのは長江のデルタ地帯にあたり、同じ地域には良渚(りょうしょ)遺跡など、広富林と同時期に盛んに稲作を行っていた遺跡が集中する。このため、約3千年前に日本列島にもたらされた稲作文化の源にあたる場所とも目されてきた。 論文などによると、結核は縄文時代の日本列島では未確認で、研究者は弥生時代に渡来したと考えている。今回の発見は、結核はこの地域から稲作文化とセットで日本にもたらされた可能性を示唆するという。 アジアでは韓国やベトナムでも水田稲作の導入期に地域で最古の結核が確認されている。中橋孝博・九州大学名誉教授(人類学)は「結核は日本人に大きな影響を与えた病気だが、それが稲作農耕文化と当初から深い関連があることがわかった意義は大きい。今後、具体的な伝来ルートの解明が進むのでは」と話す。(編集委員・宮代栄一) |
結核、稲作と一緒に日本へ渡来? 5千年前の人骨に痕跡
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