涙の理由は――。スピードスケートの世界スプリント選手権で2大会ぶり、2度目の総合優勝を果たした小平奈緒(相沢病院)が26日、開催国のオランダから帰国し、表彰台で見せた涙の理由を語った。
小平奈緒、2度目の総合優勝 世界スプリント選手権
「まさか、マリアンからかけてもらえるとは思わなかったので」。羽田空港で取材に応じた小平は、照れ笑いした。24日の表彰式で、月桂樹(げっけいじゅ)をかけてくれたのが、小平がオランダで武者修行したときに指導を受けた元五輪金メダリスト、マリアンヌ・ティメル・コーチだった。「その瞬間に、2年間を思い出してしまいました」
スケート大国のオランダは、メダルを逃した2014年ソチ五輪後に単身で渡り、心と滑りを磨いた場所だった。小平にとって「第二の故郷」だという。
思いがこみ上げる要因は、他にもあった。今月8日、ドイツで開かれた世界距離別選手権の500メートルで2位となり、この種目で16年10月から続けていた国内外の連勝が37で止まっていた。「当たり前のように勝てるレースというのは、一つもない。自分がどんなことをしてきたか、どんな気持ちでレースに臨んでいたか、振り返ることができた」。改めて自分と向き合った中で迎えた大会だった。
感慨深いところに、重なったサプライズ。「おめでとう。あなたを誇りに思う」。ティメルコーチからそんな言葉をかけられ、思わず涙を見せた。試合後には、メッセージ交換アプリで「私の心の中にナオがいるよ」などとメッセージが届いたという。
ただ、「目標としている大会もあるので、全然気は緩んでいない。はじける思いもグッと抑えている」と小平。3月上旬には、高速リンクの米ソルトレークシティーでワールドカップ最終戦がある。そこで挑むのが、「今季最大のモチベーション」という500メートルの世界記録だ。「色々考えても仕方がないと思う。とにかくアタックしていきたい」(勝見壮史)