日本の博士をめぐる悲劇が繰り返されている。就職難から「博士漂流」が問題視されて10年以上。なぜ悲劇は後を絶たないのか。対策をどう講じるべきか。病理医で、日本の科学技術政策をウォッチする一般社団法人の代表を務める榎木英介さん(47)に寄稿してもらった。
「家族と安定がほしい」心を病み、女性研究者は力尽きた
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将来を嘱望された優秀な研究者が自ら命を絶ったことに、とても悲しく、胸が引き裂かれる思いです。西村さんがたどった道は、日本の研究者コミュニティー、そして日本の社会が抱える問題をあぶりだしているように思います。
まず、将来有望な研究者すら受け入れられない、大学や研究機関の常勤職の乏しさが背景にあります。また、研究者の採用プロセスが公正かどうかという疑問も感じます。東京医大の問題が示すように、女性であることが職を得ることに不利に働いた可能性があります。また、コネや学閥といった要素が採用に影響を与えた可能性も否定できません。
制度の問題もあります。新卒一…