イラン国内でタブー視されている女子ボクシングの選手が、フランスで初めて試合をした後、帰国できなくなっている。英BBCなどが伝えた。試合時の肌を露出した服装や、髪の毛を隠すスカーフ(ヘジャブ)を着けていない写真をSNSに投稿したことが問題視され、逮捕状が出たとの情報を受けたという。
BBCなどによると、女性はサダフ・ハデムさん(24)。13日、フランス西部のロワイヤンであった公式試合に参加し、フランス人選手に勝利した。両親の反対を受けながらも、公園や自宅の駐車場などで秘密練習を継続。海外で対戦することで、イラン人女性として初のボクシングの公式戦にこぎつけたという。
女子ボクシングについて明確な法律があるわけではないが、イスラム教シーア派を国教とするイランでは、肌や髪の毛の露出が禁じられていることに加え、「暴力的なスポーツは将来、子どもを産み、母となる女性にとって好ましくない」(スポーツ省元幹部)との考えが広がっている。特に、イスラム教に厳格な保守強硬派からの反対が強く、国内で試合が出来ない状態が続いていた。
海外でのハデムさんの勝利にネット上では「イラン人の誇りだ」などと称賛が相次いだが、ロイター通信は17日、ハデムさんの代理人の話として、イラン当局がハデムさんと男性コーチの逮捕状をとったと報道。ハデムさんは同日帰国する予定を取りやめたという。(テヘラン=杉崎慎弥)