2027年に品川―名古屋間の開通をめざすリニア中央新幹線をめぐり、開業の遅れへの懸念がくすぶっている。火種は唯一の未着工区間の静岡工区(11キロ)だ。静岡県は自然環境の保全などで、県民が納得できる説明をJR東海に要求。愛知県の大村秀章知事は10日の記者会見で、国が静岡県と調整するよう求めた。
「JR東海と静岡県だけの協議ではなく、国が前面に出て調整し、事業を前に進めていく責任がある」。会見で、大村氏は語気を強め、国が調整に乗り出すように要求。5月に石井啓一国土交通相と会談した際にも同様に要求したといい、「国がやらないかん」と述べた。また、静岡県の川勝平太知事に対し「意見を言われてもできること、できないことがある。どう折り合いをつけていくかだ」と述べたことも明かした。
静岡県が問題視するのは、リニアのトンネル工事に伴う大井川水系の流量減少だ。工事により、大井川の自然環境などがどんな影響を受けるかを検討した結果を中間意見書にまとめ、今月6日にJR東海に提出。県民の理解が得られた段階で基本協定を締結するとしており、「基本協定なくして着工なし」との立場を崩していない。
静岡県側との協議が続いていることを受け、JR東海の金子慎社長は先月30日の記者会見で「この状態が続けば開業の時期に影響を及ぼしかねないと心配している」と、27年の開業が遅れる可能性に初めて言及した。6日に東京で開かれたリニア沿線9都府県でつくる建設促進期成同盟会の総会では、開業の遅れを懸念する声が続出し、「未着工区間については国、JR東海および関係者がスピード感をもって調整し、早期着工を図ること」との決議を採択した。
川勝氏は同盟会への加盟依頼書を出したが、総会では保留。同盟会の会長を務める大村氏は10日の会見で「加入いただく方向で調整」とする一方、「建設促進同盟会なので趣旨に賛同であれば入っていただければ」と釘を刺し、繰り返し強調した。「遅れることは到底受け入れることはできない。看過できない事態だ」