欧州連合(EU)は加盟28カ国による臨時首脳会議を6月30日夕から開き、今秋で任期切れとなる欧州委員長らEU機関のトップ人事を議論した。仏独首脳らの案への異論が根強く、結論は2日に持ち越され、3日連続首脳会議という異例の事態になっている。
5年ごとのEUトップ人事は夏前に決めるのが通例だ。メルケル独首相とマクロン仏大統領のほかスペイン、オランダの首脳らは、大阪であった主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の場でも協議。欧州委員長に第2会派の中道左派「社会民主進歩同盟」(S&D)が推すティマーマンス欧州委第1副委員長(元オランダ外相)を候補とする「大阪案」をまとめた。
だが、この案にEPP系の複数の首脳が「欧州委員長ポストを簡単に諦めてはいけない」(アイルランドのバラッカー首相)などと反発。現職副委員長のティマーマンス氏と難民受け入れ問題などで対立してきたハンガリーやポーランドなど東欧の首脳も「分断を進める人事だ」と同意しなかった。夜を徹して1日午後まで議論が続いたが、意見の溝は埋まらなかった。
当初の最有力候補は、欧州議会第1会派の中道右派「欧州人民党」(EPP)のドイツ人、ウェーバー欧州議会議員でメルケル氏も推していた。だが、6月20、21日のEU首脳会議ではマクロン氏が経験不足を指摘するなど支持が集まらず、大阪案ではウェーバー氏を欧州議会議長で処遇することにしていた。
EUでは欧州委員長のほか、EU首脳会議の常任議長(大統領に相当)、欧州中央銀行総裁、外交安全保障上級代表(外相に相当)の主要4ポストの後任を決める必要がある。欧州議会は5年に1度の選挙を5月に終え、新議長を7月初めに選ぶ予定。EU加盟国はその前に、4候補を所属政党や出身地域や国の規模、性別などを考慮し決める考えで、ぎりぎりの攻防が続いている。(ブリュッセル=津阪直樹、野島淳)